ニュートンは、「最後の魔術師」?

(日経「春秋」2014/5/1付) 80年近くも前、経済学者のケインズは、偉大な自然科学者ニュートンの遺稿が詰まったトランクをオークションで落札した。手に入れたトランクを開けて中身に目を通したケインズは、少なからず驚いたらしい。遺稿の大半を占めていたのは、怪しげな錬金術に関する文書だった。ケインズニュートン評は、「近代に属する最初の科学者」ではなく、むしろ「最後の魔術師」だったというのだ。ニュートンの遺髪を分析したところ、通常の40倍以上の水銀が含まれていた。水銀は、錬金術の世界で最もよく用いられた物質の一つである。今の科学者の仕事の現場は、ニュートンの時代に比べると様変わりした。厳密な手順に沿った実験を踏まえてデータを整え、論文を書き上げなくてはならない。山中伸弥京都大教授が以前に発表した論文をめぐって反省の意を表明したのは、科学の水準が高くなった証しともいえようか。
(JN) その昔、錬金術が科学を発展させた。商品の王様の金を求めて、能力ある者が競い合った。今は、商品以上に価値があり、資本が創ることの出来ない生命に向かって、私たちの最先端科学は競い合っている。競い合う以上、人間の性か、不正やミスが起きる。否、起こす。それもすべて、ノートに刻み込んで行く。自分達がトップを走る。それを知らしめながらも秘密裏に完成させていく。共有連携も必要だが、盗まれてはならない。他者より先に発表しなければならない。どのようなタイミングで、完成度の高いものを出せるか。何れにしても、足の引っ張り合いではない、高いレベルでの競いを願う。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO70619600R00C14A5MM8000/