捕鯨の現実を見つめ直そう

(日経「社説」2014/4/3付)
 南極海での日本の調査捕鯨は国際捕鯨取り締まり条約に違反するとして、国際司法裁判所は中止するよう命じた。(1)鯨を殺さないで生態などを研究する方法を十分に模索していない(2)期限を設けていない(3)設定した捕獲枠と実際の捕獲数との食い違いについての説明が科学的ではない――。判決はこうした問題点を挙げて「科学研究目的」とはいえない、と断じた。より根の深い問題がある。調査捕鯨は捕獲した鯨の肉を売った収入を資金源としている。だが日本国内の消費は減っており、在庫は2012年平均で4586トンと、1999年の3倍に膨らんだ。調査捕鯨の収支は11年度に8億3400万円の赤字に陥った。政府は国際捕鯨委員会(IWC)が一時停止している商業捕鯨の再開を求める姿勢を変えていないが、現実問題として捕鯨事業に参入する企業は現れるだろうか。かつて捕鯨を担った水産大手はグローバル企業に変わり、海外消費者の反感を買うおそれのある事業に再参入するとは考えにくい。国際的な司法闘争で主張を通すのに何が必要なのか、教訓をくみ取る努力が欠かせない。
(JN) クジラを取り続ける必要があるのか、そのための調査捕鯨であったが、日本が行ってきたことはその体をなしていないということなのか。生態学上の問題、消費の問題、及び捕鯨生活者の問題等を、この調査捕鯨において明確にできなかったのであれば、やはり科学研究目的とは言えないであろう。目的に対して、期限を設けていないとは、目的を設けていないという事である。日本は、これを機会にクジラに向けていた資本を何時までもこれに費やさず、早く方向転換願いたい。その場しのぎの対応にならぬよう、水産活動の将来を考えて、世界の中で共存すべきである。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO69306970T00C14A4EA1000/