人間の心を大切にする経済学

(日経「春秋」2014/9/27付) この碩学(せきがく)の人、86歳で死去した経済学者の宇沢弘文さんが1983年に文化功労者になり、昭和天皇に招かれて、「ケインズがどうの、だれがどうした」。そのうち自分でもわけが分からなくなってしまったのだという。すると天皇が身を乗り出してきた。「キミ。キミは経済、経済と言うけれども、要するに人間の心が大事だと言いたいんだね」。その言葉に電撃的なショックを受け、目がさめた思いがした、と。人間の心を大切にする経済学は、宇沢さんの研究を貫く芯になったテーマでもあった。公害問題にのめり込み、水俣では水俣病の研究、治療に尽くした医師・原田正純さんと親交を結んだ。米国で研究生活、ともに運動に関わった同僚が知らぬ間に大学を解雇されたりした。知人に連れられてよく集会に行き、歌のうまい女子高校生に感心した。のちに日本でもよく知られたフォーク歌手のジョーン・バエズである。人間臭さにも満ちた生涯だった。
(JN) 宇沢弘文、経済学というより人間としての考え方を長年に亘り教えていただいた。『自動車の社会的費用』から始まったであろうか、正に碩学の人、広く社会を見る目が必要であることを学んだつもりである。心の自由を求めて、また岩波新書から読み始めて「経済学は人びとを幸福にできるか」を考えてみよう。宇沢さん、次の世でも、闘ってください。ありがとうございました。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO77620600X20C14A9MM8000/