これまでに経験したことのないような大雨

(日経「春秋」2013/7/30付) 「経験」とは存外難しい言葉のようである。日本国語大辞典の「実際に見たり、聞いたり行なったりすること」。、「人間が外界との相互作用の過程を意識化し自分のものとすること」と広辞苑。おととい中国地方を襲った猛烈な雨で、気象庁が「これまでに経験したことのないような大雨になっている所がある」と警告を発した。気象庁が「経験したことのない大雨」という警告文をつくったのは去年の梅雨どきで、発令は今回が3度目である。「日本の歴史上初ということでなく、おおむね50年に一度、1人が人生のなかではじめて遭遇する危険」との趣旨を短文で端的に伝える狙いだという。そんな危機感が住民に正しく伝わったならいいのだが。経験を積んで人は賢くなり、一方で高をくくることを覚える。「経験したことのない」と耳に入ったら相互作用だの意識化だののヒマはない。まず安全の確保である。
(JN) 有史以来、経験に基づき、災害の記録は残っているのであろうが、なぜ被害が繰り返されるのか。我々は体験に基づき、経験を未来に引き継いでいるはずなのに、更に「経験したことのない大雨」等が起こる。自然の流れの中で、人間の歴史は本の瞬間なのであろうし、自然は無常なものであるから、我々は災害にあうのであろうが、未然に防げたこともあるはずだ。そこを整理したい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO57893450Q3A730C1MM8000/