日本人は元気をなくしたけれど大人にもなったが

(日経「春秋」2013/4/11付) バブル期につくられたテレビドラマをいま見返すと、いろいろ「発見」がある。あのイケイケ調は間違いなく時代の勢いを映していた。経済の中身はさほどでもないのに株や土地が狂おしいまでに上がり、余得にあずかった人々は街で札ビラを切った。はじけてみれば失意はひとしおで、この国はそれから延々と苦しみ続けることになる。今回の日銀の「異次元緩和」で高揚する相場をみて、バブルを危ぶむ声が出るのも心配性とばかりは言えまい。そんな懸念をどうはね返し、実のある経済を築くのか。しばし時間を稼いでいるうちに、安倍さんのやるべき大仕事が山のようにあろう。思えばバブルの時代を過ぎて二十数年。日本人は元気をなくしたけれど大人にもなった。昔のトレンディードラマみたいな華やかさは消えても社会はずっと成熟しているはずだ。公共事業の大盤振る舞いで財政はもつか。金融緩和の出口戦略は大丈夫か。そんな大人の目にも耐えなければならぬアベノミクスの物語である。
(JN) 我が国の経済は成熟期から既に衰退期に入り、大人というより年寄りであろうか。その年寄りたちは割と裕福であり、その年寄りたちはバブルを知っていて、その楽しさとそのはじけた後を忘れられない。日本人は大人ではあるのだが、臆病でありながら、まだまだ政府や日銀の派手な振る舞いには、踊らされる可能性もあるかもしれない。気を付けよう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO53848700R10C13A4MM8000/