爪の粉ほどの間に刻まれた人類の歴史

(日経「春秋」2013/4/12付) 宇宙が生まれたのは通説の137億年前より古く138億年前だった、というニュースが最近あった。両腕を目いっぱい左右に広げて右手の指先から左手の指先までを宇宙の年齢だとすると、爪をやすりで一擦りするだけで人類の存在など消えてしまうという。とはいえ、その間にどれだけの営みを重ねてきたのか。土器で煮炊きをした縄文人の存在を知り、体外受精児を初めて誕生させた英国人の訃報に接して、思ったりもする。北海道や福井県で出土した1万1千〜1万5千年前の縄文土器の内側からサケの脂のような成分の焦げ跡が見つかった。10日死去したロバート・エドワーズ氏が体外受精児の誕生に成功したのは35年前。「試験管ベビー」なる言葉が生まれ、神の領域を侵す所業か、と大論争が起きた。それも今は昔、当たり前になった体外受精で生まれた子はこれまで世界で400万人を数える。爪の粉ほどの間に刻まれた人類の歴史はやっぱり多彩である。
(JN) 宇宙の中でちっぽけで新参者の我々人類、この宇宙の中でそのほんの一部しかわかっていない。また自分たちのことさえわかっていないが、体外受精をしてしまったし、遺伝子だってわかってしまったと思っている。真実はわからないが、日進月歩であると思っている。この素晴らしい人類も、政をしているのも進歩の無い人類である。愚かな者が核のボタンを押せば、この短い歴史がやすり取られてしまう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO53884910S3A410C1MM8000/