14時46分。また静かに目を閉じてみる。たぶん特別な言葉はいらない。

(日経「春秋」2013/3/11付) 満員の通勤電車の中で、しくしくと泣く声が聞こえた。みんな前をむいたまま、黙って動かなかった。車輪の音と泣き声を除けば、とても静かな車内だった。津波から数日たっていた。遠く離れた東京が、被災地とつながっていた。「心を込めずに言葉を探すより、言葉を探さずに祈りに心を込める方がよい」。インドの指導者ガンジーがそう語っている。東日本大震災から2年がたつ。にぎやかさが都会に戻り、東北の現場には工事の音が響いている。何が変わり、何が変わらなかったのだろう。人が一心に祈るとき、本当に必要なものは、わずかな場所と時間だけらしい。祈りの先には必ず相手がいる。人と人が線で結ばれ、無数の見えない糸が日本中に張りめぐらされる。14時46分。また静かに目を閉じてみる。たぶん特別な言葉はいらない。
(JN) 静かに祈ろう。そして、それぞれにできることをしよう。それは被災地のことでもあり、これから被災するかもしれない自分たちのためにも。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO52655970R10C13A3MM8000/