IOCの「勅使」を迎える東京五輪

(日経「春秋」2013/3/4付) 江戸時代の「勅使下向(ちょくしげこう)」という習わしはさまざまな悲喜劇を生んだ。ささいなミスも許されないから、お役目をたまわった大名は疲れ果てることになる。「忠臣蔵」の討ち入り事件も、この饗応問題が発端だったと物語にはある。勅使下向の春弥生……さて時代はずっと下って2013年の春弥生。国際オリンピック委員会(IOC)の「勅使」を迎えた東京五輪の招致関係者も、同じくらい緊張しているにちがいない。なにしろ7年後の開催地を選ぶために立候補都市を見て回る評価委の面々である。東京五輪の成否を決める、運命の4日間かもしれない。腹を決めて、ここはしっかりと成熟都市の素顔を見てもらうしかない。勅使のためにひと晩で数百畳も畳替えをした忠臣蔵のシーンみたいなことはよして、気負わず取り繕わず。
(JN) 視察のお相手は疲れるものである。目的は何であれ、お出でになった方々には満足していただきたい。また、東日本大震災原発についても、これだけ復興をしていると、自信をもってアッピールもした。間違っても、東電社員が事故の原因を隠ぺいしているなど、恐ろしいことはないと。もし大震災があっても、東京は大丈夫であると、胸を張って説明もしたい。でも、都民を始め、日本国民はどれほど東京オリンピックを考えているのであろうか。我々は全てを理解し、受け入れを喜んでいるわけではない。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO52380850U3A300C1MM8000/