(日経「春秋」2013/2/19付) 大河ドラマ「八重の桜」、主人公を演じる綾瀬はるかさんの魅力に加えて、ご当地、福島県出身の西田敏行さんの熱演、西郷頼母が胸に迫る。会津は薩摩と長州、そして後の明治政府から目の敵にされた。おそらく最大の原因は、幕末の政局の焦点となっていた京都の治安を守る役目を担ったことだ。この役目を引き受けないよう藩内で強く主張した西郷頼母は、一時は蟄居(ちっきょ)させられた。そのくせ戊辰戦争では第一線に立って戦い、さなかに家族の多くは自刃した。柔道の創始者である嘉納治五郎の門下で最強とされ、後の小説「姿三四郎」のモデルとなった西郷四郎は、頼母の養子だった。一方では合気道とも縁がある。開祖・植芝盛平が師事した武田惣角は、頼母から会津藩の武術を伝授された、と称していた。戊辰戦争が終わって明治になってからも、会津出身者の多くは辛酸をなめた。ただ、近代日本の歴史を振り返ると、会津の人たちが深い刻印を残してきたことにも気づく。柔道や合気道のように、力ではなく技と心を磨いて強くなる。そんな生き様が光る。
(JN) 柔道や合気道のように、力ではなく技と心を磨いて強くなる、そんな心を日本人は忘れかけていないか。経済力を高め、世界に進出し、様々な驕りの中で忘れていった。そこで、綾瀬はるかさんや西田敏行さんの熱演を楽しむとともに、もう一度、日本の武道の心を考え直してみよう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO51880140Z10C13A2MM8000/