研修医時代は指導教官の足手まとい

(日経「春秋」2012/10/9付) iPS細胞はまさに再生医療の切り札、ワイルドカード、生みの親である京大教授の山中伸弥さんがノーベル生理学・医学賞に輝いた。ここまで決して順風満帆だったわけではない。柔道などで10回以上骨折したことからお世話になった整形外科医を目指すが、研修医時代は指導教官の足手まといとなり、山中をもじって「邪魔中」と呼ばれていたという。医療の現場で全身の関節が変形して苦しむ重症のリウマチ患者に接し、どうしてあげることもできない現実に直面する。基礎研究に進めばたくさんの人を救えると思い定めた。研究のためなら何だってやる。強い信念が伝わってくる。「神の領域」に踏み込むことで医療を超え、倫理的な問題が突きつけられるかもしれない。研究の成果を心待ちにする人たちと受賞を喜びたい。
(JN)人類は1960年代に月へ行くことができたので、2001年には木星へ行けると未来を夢見ていたが、なかなかそうはならなかった。それでも、生命について21世紀の未来の夢が現実に近づく。足手まといの医者が患者の悩みに向き合い、信念を持って取り組み、再生医療の切り札を生み出した。いよいよ「神の領域」に踏み込むのであろうか。しかし、これからの様々な障害が待ち構えているのであろう。夢は膨らむ。そして、年齢を経てから受けるノーベル賞であるのに、まだ未知の領域の多いこの成果に賞を出したのも、その期待が大きいのであろう。自分の若い分身が宇宙へ行けるかもしれない。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO47039060Z01C12A0MM8000/