コツコツと努力して最後には故郷に錦を飾った古川の生涯

(日経「春秋」2012/10/6付) 人気アニメ「けいおん!」の高校のモデルといわれる滋賀県豊郷町の旧豊郷小学校校舎の旧校舎が有形文化財になるそうだ。1937年の白亜の殿堂といわれた。私財を投じて建てたのは同町出身で丸紅専務を務めた古川鉄治郎である。10年ほど前に豊郷を訪れた時、町はこの校舎を巡って揺れていた。当時の町長が老朽化を理由に校舎の解体を打ち出したが、住民側は校舎を封鎖し、町長のリコール運動に発展し、町は保存に転じる。アニメ「けいおん!」の放送が始まったのはその後の話だ。図書館などとして使われているこの旧校舎をひと目見たいと、多くのアニメファンが訪れ、今やりっぱな観光資源だ。町も関連商品を売ったり、催しを開いたりして、応援している。旧校舎の階段のてすりにはウサギとカメの像がある。子どものころは劣等生だったが、コツコツと努力して最後には故郷に錦を飾った古川の生涯を表しているのだそうだ。地域の歴史や文化を生かしながら着実に街づくりに取り組む。この大切さは豊郷に限った話ではないのだろう。
(JN)我々が生きて行く上では、目先の効率や成績だけでは大切なものを失ってしまうことがある。というよりそんな数値だけで簡単にはならない。また、人間の欲も気をつけなければならない。この町長がどうだということではないが、やはり私がこれを作ったとしたいであろう。自分が生きていた証はそのものではなく、そのものをつくるまでの経緯であろう。だから住民は残したかったのでもあろうその歴史とそこで育った古川氏の足跡を。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO46967050W2A001C1MM8000/