人と文化への深い愛情に打たれる

(日経「春秋」2012/10/3付) 20年前。独立間もないボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボは、激しい民族紛争の焦点となっていた。その混乱のなか、市内の図書館で保管されていた1冊の本が、行方不明になった。「サラエボ・ハガダー」という。その時代のハガダーとしては画期的な美しい挿絵入り。人類の宝ともいうべき文化財だ。図書館が砲撃を浴びているさなか、これを安全な場所に移して守り抜いた学芸員がいた。イスラム教徒だった。実は、この本をイスラム教徒が救ったのは、この時が初めてではない。街がナチス支配下にあった70年前。ユダヤ人を目の敵にしていたナチスに奪われないよう、保管していた博物館の学芸員が命をかけて隠した。このイスラム教徒のコルクトはナチスの迫害で家族をなくしたユダヤ人の娘を自宅にかくまい、安全なところへ逃亡するのを助けたこともあると。宗教や民族の違いを超えた、人と文化への深い愛情に打たれる。
(JN)我々日本人は、自分の考えよりも体制に流される。そうでない人もいるだろうが、その空気に従う。そのため、惨いことでも、一般大衆は行ってしまった過去がある。本当にその流れで良いのか、8月24日にも述べたが12人の陪審員の内、11人の意見に疑問があれば、それを明らかにして行くことが肝心である。つまらん組織に執着するのでなく、人や文化について愛情をもって行動することが肝要であろう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO46842710T01C12A0MM8000/