老舗ホテルが下水道料金をごまかし

(日経「春秋」2012/10/4付) 池波正太郎は、神田駿河台山の上ホテルが大好きだった。晩年の「銀座日記」などを読むと、そのお気に入りぶりがよくわかる。常連はほかにも川端康成三島由紀夫檀一雄……とならべれば、文人好みの独特の雰囲気が知れよう。ところが、館内で使う井戸水の配管に計測メーターを迂回するパイプを施して使用量を少なく見せかけ、下水道料金をごまかしていたという。水を使えば使うだけかかる下水道料金というのは、じつはホテルや温浴施設にとってずいぶん重荷らしい。バイパスの配管を地中深く埋めこんで1億円以上の支払いをのがれていたスーパー銭湯の例もある。吝嗇(りんしょく)をことのほか嫌った池波正太郎のダンディズムとはかけ離れたふるまいの、なんという情けなさだろう。
(JN)不正はやってはならないが、吝嗇は悪いことではない。しかし、それ相応の料金を取るホテルが、下水道台を不正とは品格が疑われる。従業員は何か大事なことを落としているのではないか。これだけのホテルが何故、ここまでのことをやったのか、その物語を知りたいところである。これだけでは小説にならないかもしれないが、サスペンスドラマぐらいにはできないであろうか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO46879900U2A001C1MM8000/