癒やしの旅 240831

 「クイーンビートル」の亀裂隠ぺいに『有明抄(240825佐賀新聞)』は思う◆気ぜわしい日常を離れ、「癒やし」のひとときに◆白川静さんの『常用字解』によると、「癒」の中にある「兪」は、余と舟を組み合わせた字。余は取っ手のついた手術刀で、患部の膿んだ血を出し、舟の形をした皿に移し取る様子なのだとか◆せっかくの旅も、膿んだ血を受ける舟の皿に穴があいていては、気持ちが休まるはずもない。高速客船「クイーンビートル」は、船体に亀裂が入り浸水しているのを3カ月以上も隠して運航していたという◆「旅も人生と同じで80%の満足でよい」。そんな名言もあるが、旅を支える安全に「これくらいでよい」という手抜かりは許されない。患部の膿んだ血はしっかり出し切らないと。
 (私は)この夏に湖の観光汽船に乗った。30分ほどの船旅だが乗船前に氏名と連絡先の提出があり、風の様子で乗船時間が遅れ、風が弱くなったところで出発した。なかなか念が入っているなと思ったが、救命具の説明はなかった。でも浮かれた乗船者はそんなことを気にせず、景色に癒される。もしものことなど客には想像できない。