交流サイト(SNS)の著名な実業家や経済評論家の成り済ましについて『あぶくま抄(240804福島民報)』は思う▼武田信玄の死を隠そうと盗人を連れて来た。主君に成り済ます。うり二つの男は振る舞いも次第に板に付く。それでも、側室はだませず。黒沢明監督の映画「影武者」で描く▼本人と影武者を仲代達矢さんが一人で演じる。いわばはこれも身代わり。撮影当初は勝新太郎さんの役だったが、監督と衝突して降板▼昨今は交流サイト、うその投資話を信じ込ませる。虎の子をだまし取られた人の怒りや後悔を思うと言葉もない▼信玄の影武者だと見破られたのは、あるべき古傷がなかったためだった。福沢諭吉は「学問のすゝめ」に記す。〈信の世界に偽詐多く、疑ひの世界に真理多し〉。おいしい話はうのみにせず、まずは疑ってみる。信を装っても、古傷のように偽は浮かび上がる。
(私たちは)なぜ、冷静に考えればそんないい話はないと思うようなことを信じてしまうのか。そう、マスメディアでお馴染みの有名人がお勧めでは大丈夫かと思ってしまうだろうか。私たちは、先ずは疑うというより、疑問を持つことが大事なのであろう。鵜呑みにしない。日ごろからそう心がけることが大事かもしれない。めんどくさいけどね。
*画像は2024年5月4日の朝日新聞より。