東京大空襲 240310

 79年前のきょうを『天声人語(240310)』は思う▼9歳の少女の目の前には、誰もが黒く、服はズタズタ、「人間じゃない顔」▼米軍はなぜ、そんな非道な殺戮をしたのか▼母、姉、妹もなくなった。父は早くに亡くなっていた。一人きりの彼女は親戚に預けられた▼大人になってからもずっと、孤児であることは隠して生きた。毎年3月になると頭痛がして、無念が苦しくなった▼この国の政府は孤児に冷たかった。戦後長く、空襲の死者の数も名も調べていない。いまに至るも、遺族には何の補償もない。「国民の命を守るための戦争などと言いますが、私たちは国に棄てられたと思ってます」▼戦争は多くの孤児を生んだ。彼女の名は金田茉莉さん。戦争孤児の会の代表を務め、昨年7月10日死去、88歳だった。

 (私は)思う。この国の政府は弱者に冷たいのか。国民に冷たいのか。それは過去のことか、いまも変わらないのか。変えなければならないこの在り方、それを選ぶ国民は変化を怖がり、変化が起こらない。過去を忘れ、過去の過ちを繰り返すようなことがあってはならない。