読書メモ 240109

宮本常一<抵抗>の民俗学 地方からの叛逆』、門田岳久、2023年8月、慶応義塾大学出版会。
・宮本は「中央と地方との関係を、島に生きる人びととの日常性といったミクロなレベルから考えてきた」。
・「宮本は佐渡地震の故郷である周防大島うや対馬などを事例としに、中央集権的な国家の成立以前、島にはヴァナキュラーな(在地の、従来の)自治形式があり、船で外部と繋がった経済と生きるための日々の知恵があったことは明らかにした。そのような生活の場は、国民国家の成立と近代交通の発達によって徐々に失われ、中央への政治経済的従属を生み出すに至ったとする。
・「島に住む自分たちが『主体的』に生きるためには、中央から発せられた画一的な国土開発政策やそれを支える価値観に従属し、縛られているわけにはいかず、そのこと事態を先ず相対化し、自ずから価値観を新たに作り、その支えとなる文化的基盤を備える必要があった。」
・「宮本があいまいに伏してきたヘゲモニーとの距離感覚を取り戻し、周縁の立って『抵抗の実践』としての民俗学を再構築していくことも、いまならまだ可能だ。」