『記者は去り記事は残る』

<2016年10月16日(日)>
『記者は去り記事は残る』

 「SEALDsの中心メンバー奥田愛基さんは中1でいじめに遭った」。それを救ったのが、朝日新聞であったかもしれないと「天声人語」(161016)は、伝える。「『いじめられている君へ』というコラムを鴻上尚史さんが寄せた。奥田さんは、北九州から転校し、立ち直るきっかけをつかんだ。鴻上さんが寄稿したのは、高校の同級生である本紙の山上浩二郎記者に頼まれたからだった。山上記者は4年前、53歳の若さで病死した。教育記事や社説、闘病記の連載のほか、記者としての思いを詠んだ短歌が残された。〈編集の会議終りし日暮れ時ビル抱くやうに虹高く立つ〉〈四月より被災地に行く後輩を送る会にて無事祈るのみ〉。〈記者となり四半世紀すでにたち完璧なる記事未だにあらず〉」。

 毎日、新聞をみる。この膨大な情報が日々届いてくる。ほんの一部の情報しか自分は読み理解することができないが、とにかく、その日その日の情報と格闘する。新聞週間に当たり、その情報を提供する新聞社の皆様には感謝申し上げたい。一つの記事から次の展開へ、読み飛ばしの浅読み私には、個々の人の苦しみまで読み取れないが、奥田愛基さんの苦しみに、山上浩二郎さんはそれを見逃さず、鴻上尚史さんが答えてくれた。ここまではできなくとも、自分の仕事で、人の心と身体について丁寧に考えたい。そして、若者よ、新聞を広げよう。(JN)