理解しようとしなければ、偏見や憎しみは消えない

理解しようとしなければ、偏見や憎しみは消えない
 人類の歴史は、未だに闘いの歴史であり、また日々、それぞれの私たちの生活の中で自分の存在を優位にしようという抗争が続き、そこに偏見や差別も生まれ、暴力、貧困、憎しみが続く。この度、戸田章子さんは、『ある国にて』(ヴァン・デル・ポスト)の翻訳本を出した。
 「戸田章子さんには苦い思い出がある。『日本人のせいで、ぼくのおじいさんは片足がない』。ロンドンでの小学生時代、男子生徒に責められ黙った。大戦の傷痕、憎しみと偏見を感じた。大学時代に英作家ヴァン・デル・ポストの自伝的な本に共感し、救われた。映画「戦場のメリークリスマス」の原作だった。理解が和解につながる。憎悪も人種偏見も克服できる。そう感じた戸田さんは異文化を結ぶ通訳になった。20年ほど前、作家から初の長編「ある国にて」の翻訳を頼まれた。このほど出版、約束を果たした。約80年前、ポストが出身地南アフリカの人種差別に抗議して書いた作品でる。マンデラ元大統領は、人は憎むことを学ぶ、ならば愛も学べるはずだ、と。愛を学ぶには、相手を知り理解する必要がある。だが、それがいかに難しいか。米国南部をはじめ、いまも世界中で人種問題による事件や抗争が絶えない。理解しようとしなければ、いつまでたっても偏見や憎しみは消えない。」(日経「春秋」2015/5/23付)
 人は、互いの存在を認めることで生きている。私たちは、日々の仕事の中で互いの存在を認め合い、組織が成り立っている。であるが、そこには、様々な偏見と差別が渦巻いている。弱き私たちは、できるだけの味方を集めてグループをつくり、そしてそこから弱きものを作り出し、自分たちの優位をつくろうとする。それが生きる術であろうか。不作法で、発達アンバランスの私には、その術を会得できない。そんな差別行動を自分はしていないと思っていても、他人に憎しみを感じ、また憎しみを受けている。なんとかしたいが、その『ある国にて』では、どんなことが語られているのであろうか、答えを出すためのヒントがあるのだろうか。読みたいが、私にはじっくり読み上げて理解して行く能力がない。理解しようとしない私に対して、読み終えた方がおられたら、指南いただきたい。