効率優先の過酷な乗務、事故がいつ起こっても不思議ではない

効率優先の過酷な乗務、事故がいつ起こっても不思議ではない
(朝日「天声人語」2015年4月4日) 一流シェフやオーケストラの指揮者と同様、パイロットという仕事も創造的であり、ものづくりの匠(たくみ)の技にも似ているという。誇り高い職業である分、厳しさもある。免許を取っても、試験と訓練は退職するまで続く。乗る機種が変われば、そのつど免許が必要だ。飛行中、トラブルや悪天候に遭遇すれば多大な緊張を強いられる。激務に耐える徹底した健康管理も求められる。この春小学1年になった子に将来就きたい職業を聞いた。パイロットは男子で9位。昨年は7位だった。人気は安定して高い。ところが人手不足だという格安航空会社が急増して、世界的に足りなくなっている。ドイツのLCC機がフランスの山中に墜落した先月の事故では、パイロットに対する会社の管理責任を問う声が上がる。日本でも、人材の供給が期待される私立大の養成コースで、訓練の管理のずさんさが発覚した。効率優先でパイロットに過酷な乗務をさせたりしたら、「事故がいつ起こっても不思議ではない」。杉江さんはそう警鐘を鳴らす。長年、多くの人命を預かってきたプロの言葉は重い。
(JN) パイロットは、正に憧れである。心身共に強く優秀でなければ勤まらない。であるから、なかなか育成することが大変な職業である。そして、その職に就いてからも、常に自己管理をし、安全を守っていると我々は信じて、旅客機に乗っている。それだけに、彼らの心身の管理が可能な状態にしておくことが、会社の務めである。旅客機に乗ることが段々に、電車に乗るのと同じくらいに当たり前になり、価格競争が始まると、パイロットへの十分な配慮が難しくなってきたのであろうか。人の命をも自分の手にある職業は、守られねばならないし、強い管理もされねばならないようになるのか。プロは自己管理ができるからプロである。その根本的精神とともに、航空会社を経営する者の意識も、プロであり続けなければならないはずだが、それ以上に会社間の競争に勝つことが優先されることになるのか。大事なのは、人の命より会社の収入であることになってしまうのか。憧れのパイロットを単なる駒扱いになってしまった。
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