実は日本の大学は周回遅れ

(日経「春秋」2014/4/5付) 満開の木々がざわめくようだ。薄桃の雲が千鳥ケ淵、上野公園など名所を覆う。これを牧野富太郎博士なら、まだまだ貧相と言うだろう。彼は、東京を桜で埋め尽くし、世界に誇る「花の都」にしよう、と夢を語った人だった。「私は植物の精」というほど草木好きだが、学校嫌いで小学校を2年で中退した。以降は採集、観察に明け暮れ、英語や欧米の植物学も独習した。新種を多数見つけて世界に知られ、苦難の末、東大講師となり学位も得る。現代の大学も度量が広い。東大などが14日からネットで、講義の無料配信を始める。大卒資格ではないが、修了証を企業が採用・昇進の参考に使う動きもある。普及すれば学歴の意味もずいぶん変わってくる。少子化や国際競争で大学の役割が変化してきた。優秀な学生を集め、個性を磨かないと生き残れない。実は日本の大学は周回遅れ。手本となった米国の無料講座は世界で1千万人以上が受講し、モンゴルなどアジアからも秀才を次々に発掘している。急がないと国内で進路に悩む学校嫌いの異才からも置いてきぼりを食う。
(JN) 「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず」と教育の基本は、無償でその能力に応じて受けることができるべきであろう。また、能力ある者は凡人と同じトラックで進む必要もない。日本は、表向きみんな一緒、これが良くもあり、また悪くもある。人それぞれ発達が異なるのであるから、遅い早いを良い方向に理解して、それぞれの人にあった教育環境を整えるべきだ。それは、手間と費用のかかることであるが、日本の資源は、人である。例えば、原子力への投資より教育投資ではないか。周回遅れを取り戻そう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO69434450V00C14A4MM8000/