「それって、免疫力の獲得にかかる時間を長引かせるよ」

(日経「春秋」2014/3/29付) 子を持つ親となって身についた知識に、赤ちゃんは生まれてから半年ほどは病気にかかりにくい、というのがある。しかし、やがて、この親譲りの力は弱まる。自ら鍛えなくてはならない時期が来るわけだ。子供が大人並みの免疫力を得るには15年かかる、と語るCMを目にしたことがある。だから「空間除菌」で悪い菌から子供を守ろう、というCMの趣旨には一瞬納得したのだが、理系の友人は違った。「それって、免疫力の獲得にかかる時間を長引かせるよ」と。細菌たちの多くはヒトの健康を支えているらしい。アレルギーや自己免疫疾患といった病気が先進国で増えたのは、清潔な環境で育った人たちが十分に細菌を取りこんでいないからではないか、との見方もあるとか。度を過ぎれば別の問題も浮上する。そんなわけで空間除菌のCMにはいささか違和感も抱いてきたのだが、おとといの消費者庁の発表で肩すかしにあったような気分になった。空間除菌をうたう製品の多くは効果そのものが疑わしい、というのだから。
(JN) 日本は清潔になった。ゴキブリは元気に活動しているが、蠅を本当に見なくなった。食品に対する衛生のための包装も厳重になった。赤ちゃんの用品も抗菌であり、衛生面に本当に気を使っている日本、そのために、どのくらい清潔のために資本投下されているのか。また、免疫力が弱くなっているのか。空気も除菌とは、何とも過保護である。確かに、遥か彼方の中国から黄砂とともにpm2.5も飛んで来るから心配であろうが、昭和30年代の空気や川の水はもっと汚染されていても、吸い込み呑み込んでいた。衛生にも気を使うべきであろうが、企業の商品販売の意欲にも我々は十分に気を使いたい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO69078320Z20C14A3MM8000/