謎があるから歴史は面白い 231207

 歴史に自然科学のような絶対的正解はないと『国原譜(231206奈良新聞)』。解釈は時代とともに変遷する。「神君伊賀越えの真相」の著者・上島秀友氏の講演を聞いて確信した。少人数で堺にいた家康は宇治田原から信楽を経由して東へ逃げたのが通説であるが、上島氏は「大和を越えた」と提唱。通説の京越えと大和越えは江戸時代までは共存していたのだが、昭和になって大和越えは抹殺された。家康は馬で大和へ、供の者は京都へ陽動隊として向かったという計略も考えられ、まるでミステリー小説である。謎があるから歴史は面白い。もし桜井市の箸墓から卑弥呼ゆかりの品が発掘されたら邪馬台国のロマンはしぼんでしまう。と書くと邪馬台国九州説の人からは猛反発されそうだが。
 (私たちには)過去の事実がそのまま伝わらず消えて行くのであろう。後の人々が歴史としてつくり上げて行く際、その時代に生きる人々の思いが入り込み、事実がどこまで明らかにされているのか。最近起きたことさえ、権力者や多数派の思いはが変化を与えることがある。神君ももうすぐ終わる。事実とは異なる歴史小説は面白い。