車窓の眺めに 230915

 金正恩総書記がプーチン大統領に会いに行くにあたり、列車は平壌からロシア国境まで24時間以上かかったという。これに『筆洗(230915)』は列車旅行を思う▼特別列車は最新通信設備を誇り、安全確保のため迫撃砲も備えると聞く。列車での外遊は祖父の代からの伝統だが、国内の保線の悪さは相変わらず▼列車でロシアを訪れた先代の指導者金正日氏はこう語ったという。「飛行機に乗っていけば、何が見られるであろうか。何も見られない。政治家とだけ対話することになる。私は自分の目でロシアの長所・短所を確かめたい」▼今確かめるべきは自国の姿だろう。息子は車窓の眺めに目を凝らしただろうか。
 (私は)できれば、運転席の後ろうからの車窓の眺めが好きである。ローカル線ならば、子供たちに邪魔させることなく、景色を楽しむ。政治家ではないので、見るところが違うだろう。ゆっくりと自然や街を楽しむ▼独裁者は、あの間に何を見ていたのか。あれを見ていたか。それを考えていたか。国民はそのゆっくりの間も、飢えにくるみ続けている。