魔法のタクト1本で国籍を溶かし国境をひょいと飛び越える 240210

 『天声人語(240210)』は小澤征爾さんを偲ぶ▼「中国で生まれて日本で育った僕」。日中戦争の悲惨な歴史を振り返り、ときに目を真っ赤にして指揮台に立っていた▼日本人にバッハが分かるのか。欧米では差別や偏見が珍しくなかった。自分は何者なのか。どこから来たのか。根っこ探しのような意識が、中国への思いに重なったのかもしれない▼魔用のタクト1本で、国籍を溶かし、国境をひょいと飛び越えてしまう「世界のオザワ」。でも、「欧州で生まれたクラシックを、東洋人はどのくらい理解できるのか。ぼくの一生はその実験だ」▼日中関係について、こんな言葉を残している。「大事なのは一人ひとり。政府よりも、普通の人がどう考えるかが一番大事。僕はそう思う」
 (私は)20歳代の頃、新日本フィルの定期公演年間チケットを買い、小澤征爾の指揮を楽しみにしていた。なぜ、小澤だろうか。違うのだ。ボストンを指揮するとまた違う。マーラー交響曲第5番のフィナーレは忘れられない。あなたは今、どこに。バイクに乗って国境のない世界を走っていますか。さようなら!