酒は憂いを払う玉箒 231113

 今年のワインの生産量が過去最低レベルになる見通しに『筆洗(231109)』は思う▼『赤ひげ診療譚』にお酒をやめられない男が出てくる▼赤ひげに飲む金があるのなら女房と子のことを考えてやれとしかられても、男は耳を貸さない。どう金を工面するかで悩む日々。酒だけが憂いを忘れさせてくれたか▼「酒は憂いを払う玉箒」、国際ブドウ・ワイン機構によると▼世界の生産量の6割を占める欧州地域がまず不調。チリは2割減▼日本では猛暑の影響でコメの「1等米」の割合が低下したが、気候変動で荒っぽくなった自然は世界のワイン造りの邪魔をした▼1961年以来の「不作」と聞けば、頼りなく思う方もいるか。ガザ、ウクライナ…。「玉箒」で払いたくなるような「憂い」ばかりの世の中なのに。
 (私は)いまではグラス一杯のワインか日本酒を夕食時に飲むだけ。小ぶりの玉箒だ▼しかし、心の憂いは薄くなろうと、酒で自然や人間社会のこの荒っぽさは薄まることはない▼他者を悪者にして自己を正当化する精神を薄める酒はないのか。そんな酒を互いに振る舞う社会にならぬものか。