鈍器本の魅力 231007

 京極夏彦さんの新作「鵼の碑」に『あぶくま抄(231007福島民報)』は思う▼鈍器本、手に取るとずっしりと重く、頭をぶつけたら痛そうだ▼京極夏彦さんの妖怪をモチーフにしたミステリー小説「百鬼夜行シリーズ」。1280ページ、厚さ6.5センチ、重さは1.2キロ。本棚に並べれば、ひときわ存在感を放つ。胸がすくような謎解きの醍醐味だけでなく、民俗学歴史学、自然科学のうんちくが随所にちりばめられている。中身も重厚だ▼鈍器本は扱いにくい。遠い昔の同級生と、どこか似ている。不器用で授業になじめず、学校の図書室にこもっていた。でも、知識の塊。話しかけると、豊かな空想の世界にいざなってくれた。

 (私の)背後の本棚に鈍器本が2冊ある。読み始めるとそれぞれの語り手たちの世界に迷い込む危険な本でもある。きょうは東京にしようか、沖縄か。しかし、いつ読み終わるのか▼「なんくるないさ」とはならない。沖縄は図書館から借りてきたので、急がねばならないが、飛ばし読みできない一人ひとりの生活である。