奇跡的に残った大正時代の邸宅

(日経「春秋」2013/7/28付) 東京・文京区の高台に、奇跡的に残った大正時代の邸宅。その「旧安田楠雄邸」の一般公開が始まって6年がたつ。きのう訪れてみると、盛夏の中でも、庭の木々をくぐり抜けた風でエアコン無しでも十分過ごせる。日本の家とは本来こういうものだった、と思い出す。大正の関東大震災と昭和の戦災をくぐり抜けたが、平成に直面したのは相続税という課題で、ある財団法人に寄付することで保存と公開への道が開けた。節句や花見、音楽会など催事の舞台としても地域に定着してきた。邸宅に近い「須藤公園」は回遊式の庭園。土地の高低差を生かした滝と小川が涼しさを醸し出す。一帯には多くの実業家や作家などが住まいを構えたが、形として残っているものはまれ。街の変化の激しさを物語る。旧安田邸から坂を下った先の商店街、谷中銀座は地元の人に夏休み中の若者ら観光客も加わり、大変なにぎわいだ。台地の邸宅や緑。低地の商店街や水辺。いずれも今となっては土地の個性であり、都市の持つ資産だ。こうした多様性を、うまく生かしていきたい。
(JN) 私たち日本に住む者は、自然の中に溶け込んで生活をしていたのが、西洋化に押されて自然を追い出して行ってしまった。おかげでエアコンなくしては住むことができない東京になってしまった。すっかりコンクリートに囲まれ、ここは人の住むところなのであろうか。この状況がまだ進行して行くのであろうが、一極化してはなないのではないか。できるだけ自然との融合と多様性を街に残して行こう。では個人では何ができるのであろうか。とりあえず、「旧安田楠雄邸」や「須藤公園」へ行ってみますか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO57838460Y3A720C1MM8000/