燗は一種類ではない

(日経「春秋」2012/9/8付) ある日、繁華街のチェーン系居酒屋で。「えーと、日本酒ください」「冷酒ですか、熱燗(あつかん)ですか」「ぬる燗くらいにして」「え、何すか? それ」。別の日、郊外の和食の店で。「すみませーん、こちら酒。お燗でね」「かしこまりました。6番テーブルに熱燗1本!」またある日、近所の焼鳥屋で。「まず、冷やで一杯もらおうかな」。運ばれてきたのはコップの水だった。「これはお冷や。冷やといったら冷や酒のことだ」「なら、常温と言ってもらわないと」。日本語がややこしいのか常識が通じなくなったのか、酒をひとすすりして肩をつねってみる。気がつけば、日が短くなった。
(JN)日本人のこの微妙な感覚はどこへ行ってしまったのか。冷たすぎたり、熱すぎたり。日本酒はそれだけで飲める。冷やす必要もなく、そのままで良い。寒ければ、ちょっと暖めよう。ビールだってただ冷たければいいってもんでもない。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO45889470Y2A900C1MM8000/