漱石は自分を「秋の代表者」のように感じた

(日経「春秋」2012/9/9付) 夏目漱石に「初秋の一日」、20年ぶりに会う高僧の顔は記憶と変わらず、むしろ若返って見えた。若いときに抱いた尊敬の念からか、僧の年齢が自分よりずっと上だと思い込み、勝手に60歳ほどと勘定していたからだ。再会した禅僧との年の差は、実際には大きくない。20年の年月など、あっという間だ。赤ん坊は成人となり、おろおろしていた新入社員は、腕利きのベテランになっている。忙しい日々の中で、ふと我に返り、世の中の変化に気づく季節が秋である。日本で巨額の不良債権が判明し、欧州がユーロ誕生を決めたのが20年前。思えば日本も世界も、まるで違う姿になった。あたりから押し寄せる虫の音とススキに囲まれて、漱石は自分を「秋の代表者」のように感じたと書いている。覚悟を迫られる感覚だったに違いない。
(JN)秋というがまだ暑い。でも、いよいよ授業が始まる。次年度に向かっての準備も急がねばならない。数十年、整備しようとしていることを何とかせねばならない。20年ほど前に生まれた学生たちの将来に我々は何ができるのか。とにかく秋である。そろそろネクタイを締めて秋に入りましょう。
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