『74年間ホテルの地下に眠っていた品々』

『74年間ホテルの地下に眠っていた品々』
 「米国で100万部以上売れたベストセラー小説『あの日、パナマホテルで』の舞台となったパナマホテルの地下には和式の銭湯があり、日本からの移民でにぎわった。そこには強制収容される直前に人々が残したスーツケースなどの所持品が大量に保管されている。」「余録」(毎日新聞/2016/1/13日)は、それについて「混乱期の日系移民の暮らしは知られていないことが多い。74年間ホテルの地下に眠っていた品々の中には貴重な文化財もあるに違いない。所持品の開封作業は今月下旬から始まる」と伝える。
 1945年から70年を過ぎ、歴史として記録されて行くものもあるだろうが、多くのことは消えて行く。特に、生活者たちの個々の生活はただ消えて行く。ところが、74年前に置き忘れられた生活の品々があった。それがこれから開封をされて行くとのこと、いったいどんなものが出てくるのであろうか。これらの品物を我々はどう捉えて、どのように世に知らしめて行くのか。この品々は、強制収容所における悲哀のお供をしなかったがゆえに、明るい顔をしているのであろうか、それとも、持ち主を失い悲しい顔をしているのであろうか。(JN)