『日本人の振るまいを都合よく解釈したりする・・・・・』

『日本人の振るまいを都合よく解釈したりする傾向もみえるから用心したほうがいい』
 「『浮雲』は戦争の傷痕を描き出して哀切である」と、日経「春秋」(2015/8/2付)がそれは「ともすれば強いられた自己犠牲を美しく描いたり、アジアでの日本人の振るまいを都合よく解釈したりする傾向もみえるから用心したほうがいい」と忠告する。「『浮雲』は、邦画史に残る傑作である。主演の高峰秀子さんは役作りに泣いたという。時代の雰囲気を出すために、相手役の森雅之ともども徹底的に痩せる必要があったのだ。お互いにこっそりビフテキなど食べない、昼食は一緒にごく軽く……。終戦からわずか10年で、飢えて痩せこけた日本人の姿は遠い昔のものになっていたわけだ。あの戦争をめぐる映画やテレビドラマが目立ち、書店にも戦争本があふれる8月である。今年はとりわけ賑(にぎ)やかだが、リアリティー不足はやはり過ぎ去った時間の長さゆえか。」
 痩せるのに苦労している現在の凡人には、あまりにもリアルに辛いドラマは、避けたくなる。その悲惨な状況を押し込んでくる作品は消化できない。何か救いがないと、できればヒーローが欲しい。あるいは自分たちは正しいのだという連帯感を持ちたい。そして、悪役が全ての罪を背負ってくれるとありがたい。自分達が罪を背負いたくない。今を満足し、戦争自体も身近でなく、その恐ろしさがわからないし、分かろうとしない。でも、今のはかない幸せは、浮雲のようなものであることに、目を覚まさねばならない。リアルな世界を知る努力をこういった映像からも得よう。