「撮るより、おいしく食べてほしい」

「撮るより、おいしく食べてほしい」
 食堂は、スマホに一生懸命の御客でいっぱい。日経「春秋」(2015/6/29付)は、その行為が、「はた迷惑で不作法な振る舞いにつながる」と皮肉る。
 「『お昼時で混んでるのに』。旧知の老舗洋食店の若女将が浮かぬ顔だ。原因はスマホなどを手に、広くもない店内で写真を撮るお客たちである。インターネット上で、自らのプロフィルや日常を紹介しながら、他者と交流を深めるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が全盛である。テーブルの上に、ミニ三脚を立てる猛者もいるらしく、ちょっとしたリポート番組だ。ネットでの爆発的な情報の広がり方に酔い、そこへ匿名性に守られているという安心感が加わると、はた迷惑で不作法な振る舞いにつながる。くだんの女将は『撮るより、おいしく食べてほしい』と」。
 SNSで様々な自慢ができるようになった。自慢される店は、嬉しいやら困ったり。私も、SNSで自慢するのが好きであるが、食事については、それができない。食べたいが先行するので、写真を撮ることを思い出すころには皿から美味しいものが消えている。であるから、フェイスブックにどうしても、お店の自慢をしたいときは、空の皿、窓などのガラスに映る風景、酔っ払いなどになっている。言い訳ではないが、そもそも、食事は、体験してこそ食事である。我々は、レポーターではないのだから、まずは、写真を撮るより食べよう。お店の心を舌と胃袋で感じよう。