現実を厳しく見つつ将来への希望を失わぬ

現実を厳しく見つつ将来への希望を失わぬ
(日経「春秋」2015/4/23付) 安倍首相がきのうの演説で、「強い者が弱い者を力で振り回すことは断じてあってはならない。法の支配が、大小に関係なく国家の尊厳を守る」と。中国云々はともかく、その通りではないか。いや、国際関係に限らない。大切なポイントの一つが、時間を費やしても少数意見を尊重することだからである。その精神をぜひこの国でも発揮してほしいのだが、現実はどうだろう。ここ数日も、法の支配をはみだして「強い者が弱い者を力で振り回す」という、あってはならないことが繰り返されていなかったか。「知性の悲観主義、意志の楽観主義」というイタリア共産党指導者だったグラムシの言である。現実を厳しく見つつ将来への希望を失わぬ。そんな姿勢を持っていたいものである。
(JN) 小さな私たちは、日々、目先のことに追われながら、それぞれでの歴史をつくっている。その中で、お互いの尊厳を大事にして共存していかねばならないが、小さなその私は相対的に何とか人より自分を上にしようと他人の尊厳を踏み躙ろうとする。それは、有りもしない権威を高めようと、その亡霊に支配されている。国家指導者も自分の歴史と権威を高めて行こうと、常に言葉のやり取りをしながら主義という亡霊をみせつける。そのようなゲームをしなくとも、お互い分かっているが、なぜ、述べねばならないのか。それは、歴史のつくり方がまだ見えてこないからであろうか。大鉈を振るうことをしたいであろうが、とにかく小さなことから解決をして、日中の国民の安全な生活を築いてほしいし、まずは、国民の尊厳を考えてほしい。言葉のサービスや解釈も良いし、主義主張があったも良いが、大事なことは、とにかく現実の関係を変革することだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO86034440T20C15A4MM8000/