「ぼけ」、少し透き通ったピンクは「天使の肌」

(日経「春秋」2014/11/7付) 宝石商の仲間うちでは、淡いピンク色の品を「ぼけ」と呼ぶそうだ。少し透き通ったピンクは、欧州で「天使の肌」にも例えられて珍重される。それなのに「ぼけ」などと、奇妙な名前がついてしまった。極東のはずれの島国で極上のサンゴが採れるという噂を聞きつけて、イタリアの商人が大挙して土佐を訪れたのは明治の初めだった。できるだけ安く入手して、高く売るために、地元の漁師に「色がぼけている」と難癖をつけては値切っていたらしい。元から死んでいる鉱物の宝石とは何かが違う。生き物だからこその、ぬくもり。そして孤独……。その物言わぬサンゴが、中国船に不法にあさられている。「ぼけ」の名を残したイタリア商人は、日本との取引で巨万の富を築いた。その商魂のたくましさは見事と呼ぶべきだろう。彼らは巧みに商売をしただけで、盗みを働いたわけではない。当たり前のルールを守れない者に、大人の宝石サンゴを愛(め)でる資格はない。
(JN) 皆の海にあるもの、誰がどう取ろうと良いではないか。海の資源は豊富だ。クジラだってそうだろう。それでは、サンゴを日本領海内で取ろうとする中国の漁船団と変わらない考えかもしれない。陸地にしても海にしても、人間様が勝手に線を引いて、それが原因で争いを起こすとは、愚かなものである。そこに何もなければ、何も起きないが、資源があれば大騒ぎだ。砂漠など何もないようだが、石油のおかげで、今も様々な要素を含み闘いが続く。この砂漠地帯は、ぼけっとしていると殺されてしまうような過激な環境であり、日本では、「ぼけ」のために、台風が来ようと命懸けで日本海域を犯す。この人間の精神は、強大な富を得ようと、見えない手に翻弄されている。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO79398690X01C14A1MM8000/