どんなに歳月を重ねても失敗を忘れるな

(日経「春秋」2014/4/24付) 韓国語というとハングル文字の印象が強いけれど、もともとは漢字を使っていた。語彙の6〜7割が漢語由来とされ、それを韓国式に音読みしてハングルで書いているわけだ。珍島沖で沈没事故を起こしたセウォル号のセウォルも、漢字だと「歳月」である。韓国ではもっとなじみが深いらしい。そんな親しみある名をいただき、多くの修学旅行生を乗せた旅客船の、なんというむごい最期だったろう。発生から1週間たったというのに、捜索や救助ははかどらない。安全を顧みぬ効率至上主義、真っ先に逃げ出した船長が物語る職業倫理の崩壊……。さまざまな不信が渦巻いているようだ。こういう痛恨事は、しかし、なにも韓国だけの話ではない。3年前にはあの原発災害が起きたばかりだ。どんなに歳月を重ねても失敗を忘れるなと、海底のセウォル号は信号を発しているに違いない。
(JN) 歳月とともに人は忘れて行く。それが、苦しい中で私たちの生き抜いていくための能力の一つでもある。特に、島国日本人は、四季の流れとともに嫌なことを都合よく忘れて行く。でも、記録があればそれが記憶になり、忘れてはならないこととして残して行くことができる。日本では、福島第一原発について、隠された事実を明らかにして記録していくことで私たちは記憶し、同じ人災を起こさぬようにしたい。今回のセウォル号についても、事実とともに様々な不信を記録して行くべきであろう。経済発展の陰に弱き者が犠牲になるこの現実を私たちは理解し、未来に伝えて行かねばなならない。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO70328990U4A420C1MM8000/