TPPは世界の枠組みを望み通りチェンジさせる数少ない切り札である

(日経「春秋」2014/4/25付) 第34代のアメリカ大統領アイゼンハワーが「私が最もいやなのは、へたな手紙にサインしなければならないときだ」と言ったそうだ。当時の副大統領のニクソンが著書で明かした話だ。首脳同士が話し合ってから公にする共同声明にも、舞台裏で部下が準備万端整え、2人の署名にせいぜい握手を加えて、という場合が往々にしてある。ところが、きのうの安倍首相とオバマ大統領は予定していた共同声明の発表を見送り、部下に協議を続けるよう命じた。ガチンコ勝負のふうがうかがえ、悪い話ではない。環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉がいかに難物かの証しでもある。「変化(チェンジ)」を標榜してオバマ氏が就任したのが5年前。TPPは世界の枠組みを望み通りチェンジさせる数少ない切り札である。安倍さんも国益に加え国会や選挙民の思惑も背負っている。ニクソンの本によれば、ドゴール元仏大統領は「神との間に直通電話があると信じ、決断するときは神の声を聞くのだ」と評されていたという。神の声とは本能のことらしい。
(JN) チェンジしなければ現状を打破することはできない。でも、その行動により自分や所属する党の票が減るかもしれない。しかし、為政者は、何のために行動し、ことを変えて行かねばならないのか。票の結果を直接勘定するのではなく、国の代表者であれば、国民のそれぞれの幸福を守ることである。一つの約束事を行うことで、直接的にはある国民は不満に思い、別のある国民は満足することがある。経済学理論上では、その選択を美しく示してくれるが、現実社会はそんな簡単ではない。官僚たちが作り上げてきた判断のための情報をその通りに政策決定としてサインをするかするか。神と話し合い自分の判断を入れることができるか。チェンジのためには、保守的な官僚の代筆を使う勿れ、我が本能との同意をしなければならないであろう。これは、どの仕事も同様であろう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO70381840V20C14A4MM8000/