質素な生活と気さくな人柄で知られる法王

(日経「春秋」2014/3/1付) ローマ法王フランシスコは特別扱いを望まず、質素な生活と気さくな人柄で知られる法王らしい。初代とされるペテロから数えて266代、初のアメリカ大陸出身者だ。イエズス会の一員としても、初めて。昨年3月の就任から信者の「バチカン詣で」は3倍近くに増えたという。清新な息吹を感じているのだろう。法王自身、カトリック教会の改革を目指す構えを鮮明にしている。離婚や同性婚、避妊、中絶といった問題に対する姿勢を改める、と述べたことがある。最近も、お金にからむ噂の絶えない法王庁の透明性を高めるための制度改革に踏み切った。フランシスコのちょうど500年前、1513年3月に就任したレオ10世を思い浮かべる。「王朝風のバチカン文化」を体現したような法王で、財源として免罪符を大々的に売り出し、結果的にルターの宗教改革を招いた。そしてルターとは逆に内側からの改革を目指したのが、イエズス会だった。歴史の綾(あや)というべきか。
(JN) 一般大衆にとっての象徴的存在は、煌びやかで包容力があることにありがたみを感ずるものである。王朝風に、見栄え良く贅沢にしないとありがたく見えない。でも、本来はキリスト教そんなものではなかったろう。それはその立場に立つ者の能力や、それを支える者の力と考えが無ければ、質素な生活を送ることはできない。前任者を踏襲し、如何に無事に人気を終わらせるかでは、改革はできない。そういう意味でも、法王フランシスコは制度改革の実行に踏み切ったのであろう。彼の時代でそれが達成できるかどうかはわからないが、動き始めたということであろう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO67601440R00C14A3MM8000/