擬音語・擬態語

(日経「春秋」2013/9/26付) 向田邦子が短編「だらだら坂」で、登場する女性の泣き顔を形容して書いている。「小さなドブから水が溢(あふ)れるように、ジワジワビショビショと涙が溢れた」。擬音語・擬態語のたぐいは厄介である。手垢(てあか)がついたものを不用意に使うと俗に堕す。賞味期限も短い。だから森鴎外三島由紀夫は嫌った。近年よく使われるようになった5つの擬態語を文化庁の「国語に関する世論調査」が取り上げた。「きんきんに冷えたビール」「パソコンがさくさく動く」「ざっくりとした説明」「気持ちがほっこりする」「うるうるとした瞳」。事実、「さくさく」をこうした文脈で使うのを聞いたことがある人は38%だが、残り4つは70%を超えている。「うるうる」にいたっては85%だ。これでは涙顔に「うるうる」と書く気がしない。とはいえ、どんな顔を目にしたところで「ジワジワビショビショ」と思いつくはずもない。日本語はまったく難しく、面白い。
(JN) 文学的能力のない当方、擬音語・擬態語は使えない。でも、会話の中では使っているかもしれない。話相手に、より分かりやすく具体的に状況を伝えようと、一生懸命になって擬音語・擬態語を使ってしまう。また、そこには流行りものをつかおうとする、浅はかな行動になってしまう。スポーツ新聞の見出しのようにならないように、気を付けたい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO60204290W3A920C1MM8000/