高度でしたたかな対話力を発揮していかなければ

(日経「春秋」2013/2/7付) 40年以上昔になるが、子どものころ読んだ絵本のなかには、ゴリラを凶暴な野獣として描いているものがまだあった。地道な研究の成果によって、今ではゴリラが知的で心穏やかな動物であることは広く知られている。「ゴリラが胸をたたくわけ」を開けば、家族で寄り添って、笑い、じゃれ合うゴリラの本当の姿に触れることができる。真の意味は胸をたたいて自己を主張し、衝突することなく平和のうちに互いが離れようという提案だとある。対立ではなく、縄張り争いなどを避けるための対話なのだろう。さて、島をめぐるいさかいがますます緊迫の度を増している。自分たちの縄張りだと挑発や威嚇を受けたからといって、そのままやり返すのは決して得策ではあるまい。ここは万物の霊長の威厳にかけても、ゴリラのドラミングを上回る、高度でしたたかな対話力を発揮していかなければ。
(JN) 本は誰のものでもなかった島が、なぜこんなに緊張を作り出してしまったのか。我々の欲望なのか、資本主義の成せることなのか。パレスティナ問題とまではいかないが、霊長類だからこそ作り出した問題である。もう一度、周恩来の知恵をいただき、またドラミングを上回れるかわからぬが、両国でこの島でイベントでもしてみたらどうか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO51469490X00C13A2MM8000/