「団十郎はあれでいいんだよ」

(日経「春秋」2013/2/5付) 江戸は元禄のころの逸話が伝える初代の荒事が豪胆にして少し乱暴なら、亡くなった十二代目団十郎さんは、豪胆は豪胆でも、おおらかさが際立っていた。テクニックより人柄が見える人だった。不器用ともいわれたが、器用などというちっぽけな器の持ち主ではなかった。「団十郎はあれでいいんだよ」。そう言い合ってみんなで納得した。いつの時代にもそんな役者は一人二人である。古くからの役者の家だから特別なことを運命づけられているのか、といえばそんなことはない。団十郎さんはそう言った。運命ではなく自ら選んで背負ったのだ、という覚悟で、覚悟を突き抜けるような大きな芸とを、今は懐かしむしかない。
(JN) 人柄が見える人、役者だけでなく、人はそうありたい。また、人生は運命ではなく自ら選んでいくものと。このこと我が身に言い聞かせよう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO51381180V00C13A2MM8000/