月世界の物語が膨らんでいく 240218

 SLIMの月への着陸に『春秋(240218)』は思う▼優れた科学者とは、優れた「物語」の作り手である。アインシュタイン。時間の進み方が場所によって違うなんて▼いまでは日常の言葉になった「ブラックホール」。博士がいなかったらその存在は予見できなかったろう。宇宙は広く暗くて寂しい。科学はそこに人が遊ぶ空想のオアシスを作りだす▼先月、月に着陸した無人探査機SLIMが届けてくれた最大の贈り物も、そんな想像力をかき立てる力ではないだろうか。傾いた太陽電池に「西日」がさしこみ、うまく発電できた際には日本中が喝采を送った。今はマイナス170度の夜の孤独に耐えて踏ん張っている▼科学を夢見、そして夢が科学を推進する。このループを無限に繰り返してこそ知の営みは築かれる。
 (私は)ここ数十年、夜空というものを見ていない。何せ明るい世界出の生活。この明かりが消えれば、暗い宇宙の一部が現れるであろう。夜空の月も、その明るさを感じるであろうが、今はぼやけた夜空の先を想像しよう。今後のSLIMの活躍だけでなく、人類が手を取り合っての月世界の生活を。