小林秀雄の失敗 231225

 宴席を囲む機会くれぐれも留意と『談話室(231224山形新聞)』▼読みかけの本の一節が脳裏をよぎった。西川清史著「泥酔文士」▼例えば、小林秀雄。「批評の神様」。深夜、へべれけになって住まいのある鎌倉駅に降り立った。だが飲み足りない。知っている店の見当をつけてたたき起こし「酒を早く持ってこい」。同行のいとこと飲み始めたが、どうも様子が違う▼実は、誰かの別荘に入り込んでしまっていた。酒を出してくれたのは管理を任されていた女性だった。平身低頭、2人は辞去したという。いくら大批評家とはいえ今の世なら完全にアウトだ。これから年始にかけ宴席を囲む機会は多いだろう。くれぐれも留意して、ご同輩。
 (小林秀雄は)酒の失敗で他の話もある。中央線の駅のホームから転落してお堀の近くで血みどろになったと読んだこともある▼ここまで行かないが、酒の力は恐ろしい。ちょっと一杯のつもりが梯子酒となる。カネや信用を失い、命を失うこともある。気をつけようと弱き心は酒に負ける。

*画像は、小林秀雄全集第八巻より