『わたしには相撲以外の人生はなかった……』

『わたしには相撲以外の人生はなかった……ハングリー精神で闘ってきた』

 第五十八代横綱千代の富士九重親方が亡くなった。各紙、ウルフの死を悼む。「未来の大横綱が弱さを克服した瞬間の一つだったのだろう。中学卒業とともに相撲をやめようとしたり、けがで酒に走ったり。そのたびに周囲の声に助けられた」(天声人語)。「鍛え抜いた筋肉から繰り出す速攻や豪快な投げで巨体を制する「小さな大横綱」の土俵は、昭和が終わる時代の記憶に焼き付けられた」(余禄)。「「さあ、明日からまた仕事だ」。つらくとも不利であろうとも踏ん張ってさえいれば、なんとかなる。良いことが待っている。素直に明日を信じたくなる時代をあの努力の横綱は背負っていた。そんな気がしてならない」(筆洗)。「自らの潜在成長率を常に高めねば番付に残れない。稽古とは変革への不断の努力なのだ。ウルフの生涯が教える」(春秋)。

 我が世代がまた早死にした。北の富士の死からまだそれほど経たぬ。同じ年の死は、辛い。息子が「おやじは大丈夫か」と。大丈夫だと思うが、心痛みそして体のあちこちが痛んでいる。ウルフの分も頑張ろう。ウルフのあのファイトは忘れられない。格好良い相撲取りであった。ウルフの不屈の闘志は消えない。ご冥福を祈ります。(JN)