科学と夢想の宇宙

科学と夢想の宇宙
(朝日「天声人語」2015年4月13日) <「空あふぎ何をもとむや」「前の世に住みけむ星を忘れたる故」〉。「空を仰いで何を探しているのですか」「前世で住んでいた星を忘れたから、その星を探しているのです」。石川啄木22歳でノートに書いた歌は、なぜか棒線で消されている。啄木は宇宙が好きだったか、風変わりな「火星の芝居」という散文を残している。「火星の人間は、一体僕等(ぼくら)より足が小(ちいさ)くて胸が高くて、最も頭の大きい奴(やつ)が第一流の俳優になる」。大ヒットした映画「E・T」の宇宙人を思わせて面白い。きょうは啄木の没後103年の命日で、きのうは日本のロケット試射成功から60年という日だった。古(いにしえ)の人が感性と想像力で超えた空間を、科学と技術がリアルに超えていく。先ごろの米国の話題だが、火星に送った探査車が11年余をかけて、マラソンと同じ42・195キロを走った。啄木の描いたような火星人は望めぬが、生命存在の可能性は、さてどうか。太古の火星には海のような水面が広がっていたという。これも最近の米国の分析である。
(JN) 分からない世界は、様々な想像を掻き立てる。この広大な宇宙空間の中のちっぽけな地球での常識など、宇宙では無いに等しいのであろう。1969年の第一歩から友人飛行船は、地球の引力から飛び出すことがその後、数件である。あのころ2001年には木星に行けると期待したが、SFの世界で終わった。実際に、我々が宇宙を活動の場にするにはどのくらいかかるかわからないが、着実にその可能性は高くなってきている。何れ、この地球から多くの人たちが飛び出して行くのであろうが、それが地球環境の悪化で住めなくなるからというようなことではなく、また戦いに向かうようなことではないように願う。石川啄木や糸川博士のロマンを我々は、更にどこまで夢を膨らませるか。その夢を科学が実現してくれる。だから、もっと夢を膨らまそう。
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