バラマキ創生の繰り返しにならない

(日経「春秋」2014/7/23付) いまの広辞苑(第6版)が出たのは2008年だった。「ニート」「ラブラブ」「うざい」などなど約1万語を新たに収録して話題になったのだが、このときに入った言葉のひとつに「創生」がある。バブル期に竹下登首相が「ふるさと創生」を唱え、全国約3000の市町村に一律1億円を配るという大盤振る舞いに及んだ。こんど安倍晋三首相が力を入れはじめた地方振興策の看板にも「創生」の文字が躍る。「まち・ひと・しごと創生本部」を設けて担当閣僚を置き、特産品開発の後押しなどにあたるという。かねて地方の疲弊は深刻だから対策の必要性は大いに認めるけれど、往年のバラマキ創生の繰り返しにならないか気になるところだ。何兆円の予算特別枠などと聞けばさっそく思惑の渦巻く列島なのだ。ちなみに創生の創の字には傷という意味もある。策を誤り、地方に新たな傷を生んではなるまい。
(JN) 「創」は、切り込みを入れることから始めることで、傷を入れる意味があるようだ。だから、地方の創生は、ただ札束を置いていくのではない。それぞれの地域に即した方策で切り込んでいかなければならない。人のいないところに道路を作ったり、無闇に立派な建物を作るという事ではなく、そこに住む人々の仕事と生活について、一過性でない策を打ち出して行くことである。それは、発展途上国問題で使われる表現を使えば、その地域に魚を与える政策ではなく、魚を取る方法を身に着けて行く政策であろう。我が国は、有能な人材があるはずだから、人を動かそう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO74614890T20C14A7MM8000/