人生の終盤に新たに興味を持てるものを見つけるのは難しい

(日経「春秋」2014/4/11付) 「あなたの仕事は、私の体のなかに捕らわれの身になっているレンブラントを解放してやることだ」。絵を習っていて、先生にそう注文したというユーモアの感覚は大したものだ。アメリカのブッシュ前大統領が引退後に油絵に手を染め、テキサス州のダラスで展覧会を開いている。先日は英紙に投書を見つけた。「ブッシュ政権を酷評した私がこんなことを口にするとは考えもしなかったが、その“芸術”作品を見て、彼は政界に居続けるべきだったと思った」。なるほど、標的は諧謔(かいぎゃく)まじりの旦那芸である。水彩画を描いたチャーチル元英首相の著作に触発され、絵画を始めたそうだ。そのチャーチルは「趣味を持とう。人生の終盤に新たに興味を持てるものを見つけるのは難しい」と言い、前大統領は「絵は私の人生の最終章を豊かにしてくれた」と喜んでいる。結構ではないか。人目にさえ触れなければ、などとは申すまい。
(JN) 「あなたの趣味は何ですか」と聞かれて、胸を張っていえる趣味をお持ちでしょうか。自分は中途半端というか、移り気というか、何をやってもそんな調子の人生、気がつけば60歳が目の前である。人生の終盤が何時からか、その考えは区々であろうが、そろそろ見つけないといけない。どこで、仕事にけりをつけて、楽しめる人生をその終盤にできるか。一人の趣味を良いが、妻と楽しめる趣味もあってもいいだろう。死ぬまで妻には迷惑をかけることになるかもしれないが、それが精一杯の誠意だ。また、趣味以外のもボランティア活動をせねばならない。これこそ人の迷惑顧みずと言われそうだが、これは社会への精いっぱいの感謝だ。我々は美しく人生を終えることはできない。最後まで、お互いに迷惑をかけ合い、お互いの存在を認識して生きて行こう。とにかく、人に迷惑をかける趣味を探そう。
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