「流域住所」

(日経「春秋」2013/9/29付) 土地には住所がある。大抵の人は自宅の住所を記憶していることだろう。何県の何市の何町というふうに、大から小へと地名が連なる。もし、お上の定めた線ではなく「川」を軸に大地を区切ったら、どんな地図ができるだろうか。慶大で生物学を教えてきた岸由二さんが提唱する「流域住所」は、そうした試みの一つだ。何という川の流域に自宅があるか調べ、覚えておくのだ。どう役に立つか。例えば大雨が降ったとき、行政単位の警報では、遠くの自治体の名を目にしても危機感はわきにくい。実際は上流が豪雨なら下流も危ない。古来、安全な暮らしのために、気象や地形など自然環境の知識は不可欠だった。秋の行楽期、家族で身近な川の流れをたどる、上流や下流を歩く、といった小探検はどうだろう。見慣れた名の川が意外に太かったり細かったり。そんな驚きを入り口に、水の流れに関心を深める好機になる。
(JN) 旅先では、まずは高いところへ上り、そこの地理を観察することにしている。あるいは博物館へ行き、そこのその地域の面白さを見出す。また、「流域住所」という楽しみがあるのか。地域の地理をマクロからもミクロからもつながりを頭に入れておかねばならないのに、最近は電子地図で容易く自分の知りたい情報が速やかにわかるようになり、ミクロに付近の情報しか見ていないことがある。いま自分の住む場所について、引っ越しをした当時は子供と歩き回ったが、最近はすっかり歩かなくなった。引っ越しをしたころと土木工事で川の状況も変化しているので、確認が必要であるし、まだ上流まで行きついていない。久しぶりに歩いてみよう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO60366490Z20C13A9MM8000/