「アヌス・ミラビリス」

(日経「春秋」2013/7/24付) ラテン語の「アヌス・ホリビリス」は「ぞっとするようなひどい年」といった意味である。1992年の末、英エリザベス女王は演説でこの言葉に沈んだ思いを託した。王室はチャールズ皇太子とダイアナ妃の不仲をはじめスキャンダルまみれだった。いま、ウィリアム王子とキャサリン妃の第1子誕生にわくかの国の光景を見ていると、少しずつ姿を変えながら危機を乗り越え、世論を味方につけていった王室のたくましさを感じる。王子は両親の離婚と母ダイアナ妃の凄絶な事故死というつらい体験をした。一方、キャサリン妃は未来の英国王に貴族でない一般の家庭から嫁いだ350年ぶりの女性だ。ウィリアム王子は勤め先の空軍から2週間の育児休暇をもらい、その後も妃と協力して子育てをするそうだ。いいことである。ちなみに、「アヌス・ホリビリス」の反対は「アヌス・ミラビリス」(素晴らしき年)という。
(JN) 皇室の存在云々はここでは措き、若い世代の話は嬉しいものである。様々な暗い過去があろうとも、若い世代が活躍し、また次の世代を生みだして行くのが、我々人類の仕事であり、それは一人ひとり異なる人生となって行く。辛さを乗り越えて、未来に向かっていく、ウィリアム王子にまずは「おめでとう」と言いたい。そして、ダイアナ妃のように英国という世界に留まらず、全世界の幸せのために活躍してほしい。我々一般大衆も、一個人の利益にだけ固守することなく、自分たちの小さな世界でもいいからそこの世界に人たちとともに、若い世代を育てて、「アヌス・ミラビリス」が続くように、或いは「アヌス・ホリビリス」が無いようにしたい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO57683560U3A720C1MM8000/