「1強政治」の地表に、古層がぬうっと顔を出している

(日経「春秋」2013/7/25付) 「つぎつぎになりゆくいきほひ」。丸山真男が唱えたフレーズである。主体的に何かを「する」よりも、自然に次々に「なりゆく」ことを重んじ、その勢いに身を任せる――。それが日本人の思考と歴史の流れを解くカギだという。自民党をぶっ壊すと小泉さんが叫んだ時代があった。首相1年交代の時期があった。民主党の政権があった。そして昨年末からは安倍さんの天下となり参院選も圧勝だ。まこと「つぎつぎになりゆくいきほひ」である。勢いに乗って存在感を増してきたのが、既得権をしっかり守ろうとする「古い自民党」だ。郵便局、農協、医師会、建設業……。比例代表の当選者をみても、昔ながらの業界が支えた面々がずらり並ぶ。TPP交渉で、コメなどの「聖域」死守にばかり気が向くのも当然のなりゆきだろうか。丸山はもうひとつ指摘をした。日本人が過去や未来よりも、もっぱら「いま」を尊ぶというのだ。勢いのある「いま」が良ければあとさきは考えない。「1強政治」の地表に、古層がぬうっと顔を出している。
(JN) 我が身であろうか、「いま」が良ければあとさきは考えない、これは正に一般大衆の行動であるので、成り行き任せである。但し、過去を持っている富裕者たちは、過去を守るために未来を考えるゆえ、そのために既得権益を死守する当然の成り行きとして、結託するのである。一般大衆はその勢いに成り行き任せだ。文句を雖も、「つぎつぎになりゆくいきほい」である。日本は変わらない。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO57731930V20C13A7MM8000/